ヴェニスに死す (岩波文庫)

ヴェニスに死す (岩波文庫)

地位も名誉も手にした年老いた作家が、少年タッジオという神につくられたかのよな美に魅せられ、狂い、死へ突き進んでいく物語。
訳が美しく流れるようだ。読み解く、というよりは感じ取る、という感覚で読み進めてしまう。異国ベニスやタッジオの美しさに浮わついていると突如主人公に死が訪れる。毎日の新鮮な力をひとつの芸術作品に費やしていたこれまでとは違って、死ぬ間際の主人公は陶酔と感覚に使い果たしている、その隙に!不経済に見受けられることの方が主人公の充実を生んでおり、いままでの名誉などと相反するようだ。いいのかな。ベニスの町中に主人公を率いたタッジオは本当に神の子で、その美しさに命を落とした主人公は本当に芸術家だったのね。と思います。