海になみだはいらない (角川文庫)

海になみだはいらない (角川文庫)

相手の立場で考えることは難しい。結局おもいやったつもりで自己満足になってしまう。ちなみにこの本の対象はおそらく小学校高学年くらいなんだが、教訓めいた言葉は一切使わず、読者が各自考えられるようになっているのが良いところ。
一番すきなのは「きみはダックス先生がきらいか」という短編にでてくるキヨコさんというおんなのこ。きまじめなキヨコさんはマイペースなダックス先生に今まで自分が正しいと信じていた校則ややさしさのあり方を全否定され、あげくのはてに「先生なんかきらい」とこども心で言ってしまった言葉まで「きらいならば仕方無い」と悲しい形で否定されてしまいます。その後も彼女先生に反抗し続けるのですが、決して先生の悪口は言わず、自分と闘ってきたのでした。クライマックスの合唱祭では、一人足りないので出演できないという彼女にとってはあり得ない状況に陥ってしまったのに、クラスを代表して「一人欠けているのでうちのクラスの合唱とは言えません」宣言をします。弱冠小学生にしてこんなにできた人間はいるでしょうか。ずっと昔からいいわけばかり並べて自分を飾ってごまかしごまかしやってきたわたしの胸はずきんとしました。ひたむきなひとはかっこいい。ほんとうに、かっこいい。それをうらやましいと思ってしまうのだから、わたしはまだまだひたむきなひとには近づけやしない。

いつもいつも後悔ばっかりだ。


最初は本を読むたび星をつけて度合い(何の)を示していました。わたしもひとにすすめるのには自分の評価が必要だと思っていたからだ。本を読んでどう感じたか、どう考えたかを記録した方が自分の記憶に残るし、仮に人にすすめることがあっても、気持ちを伝えることの方が相手の参考になると思うからだ。なにしろわたしは読んだ本に格付けができるほどの評論家でもなんでもないのだ。ほーんとうになーんでもないのだ。
後で読んで後悔しても、どんなに稚拙であっても、自分の気持ちを書くことが大切だと思っている。自分の気持ちとして「可もなく不可もない話でした」「Bランクでした」という感想を見ると、それだけの本だったのかと思ってしまう。