世界クッキー

世界クッキー

自分とは別個のものとして存在するなにか大きなもの、励ましてくれたり包み込んでくれたりするようなものとしてそんなふうに空を見つめれば、夢野久作で「この空の果てのひとかけらの成分と、この自分の奥にあるひとかけらの成分はきっと同じものでできているのです」というような意味の文章があったこと、それも同時に思いだす。
こんなふたつの一見矛盾したような感覚をかるがると可能にするのは、言葉にして考えることができるためであって、言葉のおかげであって、言葉を使えば、空が自分になったり、やっぱり分かれて、抱きしめたり抱きしめられたりできるのだ。そんな言葉の顔を真正面から斜めからみつめながらにいろいろやってたら、大きな新人賞をいただいた。(P72)

自分の思うこと感じること言葉にできないと相手にされないということは重々承知だが、やはり、言葉にできない風景とか心模様とかあるとおもうのよね。口に出した途端後悔してしまうような(語彙が貧弱ということもあるのだけど)。川上さんはそれを認めたうえで、一番ぴったりくる言葉を選んで連ねる努力をされている方だとおもう。すきだ。