麻雀放浪記〈1〉青春編 (1979年) (角川文庫)

麻雀放浪記〈1〉青春編 (1979年) (角川文庫)

人生を博打という切り口で語る一冊。残念なことにわたしは肝心の麻雀のルールが分からず、牌がずらっと並んだページなど理解不能でせっかくの駆け引きを楽しむことができなかったのが残念であった。
そんなものかなと思う。男の人が博打にしろ音楽やスポーツにしろ、すべてを投げうってのめりこむ姿は女には分かりかねる。だっておんなのこだもの。めんどくさいことしたくないし、お金は欲しいけど命かけるなんて大げさヨ!などと急にひとりよがってしまうも、正反対だから男女は支えあうし惹かれあうものなのだなあと、改めて思う。やっぱり男の人にはいろいろかなわない。

「とてもわからねえだろうが、いってきかせてやる。素人衆が慰みに牌をにぎってるんじゃねえぜ。俺たちゃこれで生きているんだ。死ぬまでやるのさ。負けるってのは、うまり死ぬ時のことなんだ」
「わかってるわよ。あたし健さんが好きよ、本当に好きなのよ、尊敬もしてるわよ。いつもはそう思わなかったけど、でも嘘じゃいのよ」
「そうじゃねえ、お前は俺を、不幸な男だと思ってるだけなんだ」
まゆみは地面に落ちたコートを又着せかけた。
「それも本当ね。不幸なんだと思ってるわ」
「それ見ろ」
「何故、博打なんか打って生きるの」
「そんなこと知るもんか。だがな、こりゃアなにも珍しい生き方なんかじゃねえんだぜ。本来は皆、こんなふうにして生きるものなんだ。それじゃ不幸だっていったって、仕方ねえんだよ」
「何故なの。負け惜しみでしょ」
「どうだかな。不幸じゃない生き方ってのは、つまり安全な生き方って奴があるだけだな。安全に生きるために、他のことをみんな犠牲にするんだ」
「それもいいじゃないの」
「そうだな、女はそう思うんだ」
中略
「後悔しねえかい、俺と一緒で」
「なんで後悔なんかするもんですか」
と彼女は健の耳元で甘くささやいた。
「だってあたしは、健さんにたったひとつ残った持ち物じゃないの」
(P211〜P212)

好きなことを生業にして満足できる人ははたしてどれほどいるのだろうか。
今年はまーじゃんおぼえよう。